乳ガンの検診費用はどれくらい? 無料で受ける方法は?
国立がん研究センターがん情報サービスの「全国がん登録罹患データ」、2020年「部位別がん罹患数」によると、女性の中で最も罹患数が多いのは乳ガンです。乳ガンは、診断を受けてからの5年後生存率が高い病気であり※、定期的に検診を受けて早期発見ができれば治りやすいガンといえます。しかし、検診を受けるとなると、気になるのが費用です。実際、検診費用はどれくらい必要になるのでしょうか。
ここでは、そんな乳ガンの検診費用や、無料で受ける方法を解説します。万が一、乳ガンに罹患してしまった場合の備えについても紹介しますので、あわせて参考にしてみてください。
※ 出典:「全国がん罹患モニタリング集計 2009-2011年生存率報告(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター, 2020)、独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成22年度報告書」
乳ガン検診の種類
乳ガンの検診では「マンモグラフィ検査」が行われます。医師が乳房を観察したり、手で触ったりしてくぼみやしこりなどの乳ガンの兆候がないかを確認する「視触診」という検査方法や超音波検査もありますが、乳がんによる死亡率を下げる医学的な根拠がないため一般的な乳がん検診ではマンモグラフィ検査のみを行います。
マンモグラフィ検査で異常があった場合は超音波検査を行ってガンが疑われる部位をさらに詳しく観察します。
そのためここでは「マンモグラフィ」「超音波検査」について、詳しく紹介していきます。
マンモグラフィ
マンモグラフィとは、乳房専用のX線撮影装置による検査のことです。乳房を片方ずつ圧迫板で挟み、撮影してしこりや石灰化がないかを調べます。乳房に痛みを伴うこともありますが、撮影自体は数十秒ほどで終わることがほとんどです。なお、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」において、乳ガン検診はこのマンモグラフィを原則とするとされています。
超音波検査
超音波検査は、その名の通り超音波で乳房にガンが疑われる病変がないかをチェックする検査です。乳房に超音波を当て、跳ね返ってくる反射波による画像から、病変の有無などを調べます。マンモグラフィでは乳房全体が白く写ってしまうことから、病変が見つかりづらいとされる高濃度乳房(乳腺組織の割合が大きい乳房)の場合には、特に有用とされることがあります。放射線による被ばくの心配がないため、妊娠中でも検査が可能です。
乳ガン検診の費用は?
乳ガン検診の費用は、受診方法によって異なります。企業健診などではなく自費診療での検診では全額自己負担となり、その料金設定や検査内容は、病院によってさまざまです。一方、一定の年齢に達すると受けられる自治体が行う乳ガン検診は、無料または安価で受けることができます。
たとえば東京都中央区では、「36歳以上で偶数歳の女性区民」、「37歳以上で前年度受診していない奇数歳の女性区民」に乳ガン検診(問診・マンモグラフィ検査)を行っています。対象者には受診券が送付され、費用は無料です。
大阪市では、年度末時点で30歳~39歳の女性は年度中1回の超音波検査(検診料1,000円)、40歳以上の女性は2年度に1回のマンモグラフィ検査(検診料1,500円)を受けることができます。年齢や条件によっては無料で検診が受けられる場合もあります。
福岡市では、40歳以上の女性は2年度に1回、問診とマンモグラフィ検査を受けることができます。検診費用は年齢と検診場所によって変わってきますが、40歳代は1,300円または1,500円、50歳以上は1,000円または1,200円です。
このように、自治体によって費用や検診内容、対象が異なるため、お住まいの自治体のホームページなどで確認してみましょう。
(ここで紹介した自治体の実施例は2024年6月現在の内容です。)
乳ガン検診費用は受診方法によってどう違う?
先ほど紹介したのは、自治体主催の乳ガン検診の費用の目安です。乳ガン検診には、他にもさまざまな受診方法があります。ここでは、そんな乳ガン検診を受けるさまざまな方法や、費用の違いについて解説します。
企業健診に含まれる乳ガン検診を受ける
会社員の人は、職場で促される健康診断の中で乳ガン検診も受けられることがあります。 費用の負担は事業者が行うため、基本的には無料で検診を受けることが可能です。ただし、対象年齢や検査内容に関しては企業ごとに異なります。
乳ガン検診の無料クーポンを使用して受ける
厚生労働省は「がん検診推進事業」として、一定の年齢の人を対象にしたガン検診の無料クーポンを配布しています。配布内容については住んでいる自治体によって異なりますが、基本的には、そのとき自治体が指定する期間内に生まれた人で、指定の年度内に検診を受けていない人が対象となるものです。
対象の年齢に当てはまる人は、無料で受けられる機会を逃さずに検診を受けましょう。詳しい内容は、お住まいの自治体のホームページなどで確認できます。
全額自己負担で受ける
企業健診や自治体主催のガン検診などで乳ガン検診を受けるチャンスを待つのも一つの方法です。しかし、受けられるタイミングが限られていたり、年齢制限や検診内容に制限があったりと、いつでも希望通りに検診が受けられないのはデメリットと言えます。
自費で検診を受けるには、費用面の負担がかかります。その代わり、年齢を問わず、定期的かつ自分にとってベストなタイミングで受けられるのはメリットです。また、希望する検診内容で受けられるため、安心感も大きくなります。早期発見のために、自費で定期検診を受けるのも一つの選択肢だと言えるでしょう。
乳ガンは早期発見・早期治療で比較的治りやすい病気です。だからこそ、定期的な検診を受けることが大切になります。とはいえ罹患率は高いため、万が一かかってしまったときの負担を少しでも減らす備えをしておくことも大切ではないでしょうか。
アメリカンホーム保険の女性のための医療保険「morph(モルフ)」では、女性特有の病気に罹患したときに受けられる補償を備えられます。生まれてはじめて女性特有のガンと診断されたときに補償を受けられる「女性ガン一時金支払特約」など、いざというときに安心できるさまざまな補償を用意しています。定期検診で病気を早期発見できるようにするのはもちろんですが、もしものときのために医療保険を備えてはいかがでしょうか。
【医療情報に関する監修】
医師:成田 亜希子
国立大学医学部卒。総合診療医。
国立保健医療科学院や公益財団法人結核予防会結核研究所で研修を積み、保健所勤務経験から感染症、医療行政に詳しい。
また、行政の女性健康相談窓口の担当経験もあり、女性を対象とした健康教育なども多く手掛けている。
現在は美容クリニックに勤務し、美容の悩みも含めて女性のトータルケアを手掛けている。